フロートレイルに架ける夢

2016年にニセコ初のマウンテンバイクフロートレイルを作った中嶋哲平さんにお話を伺いました

いつもお客さんを連れてパウダーガイドをしたり、時期によってはマウンテンバイクで走り回っていたりするので、なかなかこうしてじっくり座ってお話しできるのはまれなことです。ニセコのマウンテンバイクシーンを作るということがどういうことなのか、期待を膨らませて会いに行ってきました。

Go With The Flow Magazine Article 2016 Asahigaoka Flow Trail Teppei Nakajima 2

エクスペリエンスニセコ(以下EN):早速ですが、まずはご自身のことについてお聞かせ願えますか。

中嶋さん:42歳、生まれは東京です。10年ほど前にニセコにやってきました。ニセコに来る前は4年間、カナダのウィスラーにいました。日本でも、ウィスラーで得た経験を活かしたいと思っていたところ、ちょうどニセコが外国人に注目され始めたところだったので、いいチャンスだと思い、決めました。

EN:この10年間でニセコはどのように変わったと思いますか?

中嶋さん:当時はまだそんなにたくさんの人が年間通して住んでいない頃でした。シーズン毎に遊びに来るような、腰を据えて移住するというような動きはまだありませんでした。それもあって、地元の日本人にとっても外国人とのコミュニケーションは言語だけでなくその文化も理解し合うのが難しかったと思います。今ではバイリンガルの日本人や外国人を多く見かけ、コミュニケーションもその点スムーズになっているように思えます。これはもうニッポンという国の中で「ニセコ共和国」なるものができあがっていて、まさに多様化の進んだメルティングポットといえます。

EN:ニセコになぜ移住しようと決心したのですか?

中嶋さん:スノーボードのキャリアが良くなるにつれ、仕事も増えてきたのが始まりです。徐々にライフスタイルも確立され、その頃にはニセコに来た人達が、冬のスキーリゾートだけでなく、次々に通年通して楽しめるリゾートとしての価値を見出し、動き出していたころでした。グリーンシーズンにも力を入れ出し、マウンテンバイクで仕事をする機会を得たのもこのころでしたが、始めたときには正直必死でした。

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EN:今のニセコは年間楽しめるリゾートとしてはどうお考えですか?

中嶋さん:近年徐々にニセコのグリーンシーズンは変化していると思います。特に若い年齢層の人たちや家族連れが目立つようになり、リゾート全体が活気ある雰囲気になっていると思います。

EN:フロートレイルについて少しお話しいただけませんか?何がきっかけだったのでしょうか?

中嶋さん:そもそもは、倶知安の議員の一人でもある、田中よしひとさんが始まりです。倶知安とサンモリッツの姉妹都市協定50周年を記念して訪れたスイスでアレグラという会社を見つけたのがきっかけです。この会社は、ヨーロッパで多くのフロートレイルのアイデアを導入し、コースを開発してスポーツの発展に多大な貢献をしてきており、今ではヨーロッパにとどまらず、世界中にてトレイルのデザインに取り組んでいます。

アレグラの会社から二人の視察を倶知安に視察にお招きし、自転車観光の可能性を伺いました。昨年(2015年)、フロートレイルの原案に着工し、今年(2016年)になって政府からの助成金により、トライアルという形ですが、まずは実際につくってみせることができ、ニセコの夏のマウンテンリゾート活性化に向けて可能性があることを証明できたかと思います。運営についてもゲストからの十分なデータ集計、フィードバックがあれば更によくして行けます。

今年(2016年)はまだテスト段階ですので、毎日営業ではなく、数日間のトライアル期間としてのオープンとなりますが、全道から来てくれているテスターたちからフィードバクを得て、政府に報告していきたいと考えています。トレイルによって自然を傷つけたり、浸食を引き起こしたりしないということを示すのは大切だと思っています。

EN:多くの人が誤解しているかもしれないですが、マウンテンバイクと聞くとどうしてもハードルが高いと思いがちです。「フロートレイルマウンテンバイク」と「ダウンヒルマウンテンバイク」の違いて何でしょうか?

中嶋さん:単純にいうと、フロートレイルの方が簡単なんです。ダウンヒルは傾斜が急ででこぼこ道の荒れた山道を下りるため、難易度が高いのに比べフロートレイルは名前の通り、流れるようなコースで斜度が浅く(15度~20度)、平らにできていないので、ターンの際も体を揺らせ、なんというかジェットコースターに乗っているようなイメージでしょうか。フロートレイルは自転車に乗っているときの浮き沈みの感覚が好きな人が多いです。浸食被害が少ないので環境にもよく、何よりうれしいポイントは初心者から上級者まで楽しめるところでしょうか。初心者はゆっくりと自分のペースで降りられますから。上級者のように早く降りるにはそれなりのテクニックが必要となってきます。

EN:この夏(2016年)作ったコースについて少しお話願えますか?

中嶋さん:もちろんです。倶知安町の旭ヶ丘スキー場にコースはあります。倶知安駅の裏側です。昔使われていたスキーのジャンプ台が見えるところです。

コースは全長1.3キロあり、7人のチームで20日間かかって作り上げました。10歳くらいの子供たちから楽しめるように作っています。石がなく、ダートオンリーななめらかなコースなので初心者の方にも良いと思います。

EN:今後の予定や夢はありますか?

中嶋さん:将来的な可能性を言えばは無限です。ニセコエリアで過去10年作ってきたトレイル同士を結んだり(例えば花園からひらふまで、ひらふからビレッジまで・・)スキー場にリフトはありますから、リフトを使って簡単にのぼり、下ってくることも可能です。

夏季シーズンの賑わいが冬季シーズンを越えることは厳しいとは思いますが、まだまだのびしろはあると思っています。ニセコの夏は比較的気候がいいので、大自然に囲まれたこの高原という環境を存分に心で感じてほしいと思っています。

EN:リゾートサイドに何を求めますか?

中嶋さん:ひとつお願いするということであれば、それぞれ独立したリゾートの繁栄ではなく、ニセコエリア一体として協力し合ってゴールを目指せればいいなと思います。全リゾートが一体化すればその力は相当なものになると思います。ニセコ町と倶知安町の両町にも言えることですね。そうなれば、年間通して本当に魅力あるエリアになると思います。

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中嶋さんは、夏季はマウンテンバイクトレイルの制作に携わられている一方でライダーでもあり、冬季はスノーボードのインストラクターとしても働いていらっしゃいます。英語も堪能で日本、欧米文化を両方経験しているからこそ、リゾートをどう特別にしていくかを偏らずに考えられています。

≪このインタビューは2016年にExperience Nisekoに掲載されたものです。フロートレイルの今後の情報はエクスペリエンスニセコ内でも随時アップしていきます。≫